JAIST の 5D プログラムに関する中間報告書
1. はじめに
北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST) には,様々な教育プログラムが存在しており,希望するキャリアに合わせて選択することが出来ます。その中でも,5D プログラムは博士号取得を目指す学生向けに提供されている教育プログラムです。元々は,基礎研究などの 2 年間で研究成果が出しづらい分野を専攻している学生向けの教育プログラムですが,筆者のような応用分野の学生も選択することが出来ます。
5D プログラムは修士論文ではなく,博士研究計画調査報告書と呼ばれる調査論文の提出と 2 回の審査を通過することで修士号を取得することが出来ます。そのため,5D プログラムで修士号を取得する学生 (博士研究計画調査選択者) と修士論文を提出して修士号を取得する学生 (修士論文研究選択者) を比較すると博士前期課程 2 年次のスケジュールが大きく異なります。しかし,博士後期課程進学後は 5D プログラム以外の教育プログラムを選択している人と同じスケジュールで進みます。
5D プログラムは,早期から博士号取得を目指す学生にメリットがある教育プログラムです。しかし,博士研究計画調査選択者は,修士論文研究選択者と比較すると非常に少なく,情報を収集するのが非常に困難でした。筆者は,5D プログラムで情報科学の修士号を取得し,現在は情報科学の博士号取得を目指していますが,入学から修士号取得までは手探り状態でした。そこで,5D プログラムの選択を検討している人に向け,入学から修士号取得までの過程を 5D プログラムの中間報告書として記述します。
2. スケジュール
博士前期課程 1 年次は,修士論文研究選択者と大きく異なる点はありません。しかし,必要単位数は修士論文研究選択者と大きく異なる (詳しくは後述) ため,1 年次から計画的に単位を揃える必要があります。その一方,博士前期課程 2 年次は修士論文研究選択者とスケジュールが大きく異なります。
7 月上旬に「(1) 博士論文研究基礎力審査願の提出」と「(2) 博士後期課程学内進学者専攻試験の出願」を行う必要があります。(博士論文研究基礎力審査は内容が複雑なため後述します) これらの申請書類を提出する際,研究の中間報告書 (4 ページ) と博士後期課程の研究計画書 (2 ページ) を提出する必要があるため準備が必要です。
(1) 博士論文研究基礎力審査は,8 月に行われる博士論文研究基礎力予備審査 (プレゼンテーション) と 10 月に行われる博士論文研究基礎力審査 (プレゼンテーション + 筆記試験) の 2 回に分かれており,両審査の合格と博士研究計画調査報告書 (後述) が受理されることによって修士号を取得することが出来ます。いずれかの審査で不合格になった場合,5D プログラムから除名され,修士論文研究か課題研究で修士号を取得することになります。また,博士論文研究基礎力審査の筆記試験に関して,詳細を記述することは出来ませんが,基幹科目を多く履修しておくことをオススメします。
(2) 博士後期課程学内進学者専攻試験は内部進学試験 (プレゼンテーション) です。博士後期課程学内進学者専攻試験に合格することで博士後期課程に進学することが出来ます。博士後期課程学内進学者専攻試験が不合格の場合,次年の 2 月に再度受験することが出来ます。仮に,8 月の博士後期課程学内進学者専攻試験を合格した後に 5D プログラムを辞退した場合,修士論文研究か課題研究で修士号を取得すれば博士後期課程に進学することが出来ます。しかし,その場合は 5D プログラムではありません。
10 月に博士研究計画調査報告書を提出する必要があります。形式としては調査論文であり,枚数的には 50 ページ以上になると思います。修士論文研究選択者と課題研究選択者の論文提出が次年の 2 月なので,博士研究計画調査選択者は半年早く論文を提出することになります。そのため,修士論文研究選択者と課題研究選択者より早いペースの進捗が要求されることに注意しましょう。
3. 必要単位
5D プログラムの特徴として,博士前期課程における選択科目の必要単位数が他の教育プログラムと比較して多いことが挙げられます。具体的には,修士論文研究選択者が 20 単位,博士研究計画調査選択者は 28 単位であり,8 単位分の講義を履修する必要があります。
JAIST では,クォーター制を採用しており,夏と冬に集中講義が設けられています。そのため,毎クール 2 〜 4 単位を取得すれば 1 年生で必要単位を揃えることが出来ます。また,1 年生の前半に詰め込むことで,1 年生の年末までに必要単位を揃えることも可能です。しかし,5D プログラムでは 8 単位多く履修する必要があるため,毎クール 4 〜 6 単位 + 集中講義を履修する必要があります。
勿論,2 年間に分けて単位を揃えても問題ありません。しかし,上記でも述べた通り,2 年次の 7 〜 10 月は審査の準備や報告書の執筆などで非常に忙しくなるため,少なくとも 2 年次の Q1 までに選択科目の必要単位を揃えることをオススメします。
修士論文研究選択者 (平均的) | 修士論文研究選択者 (詰め込み) | 博士研究計画調査選択者 (筆者) | |
---|---|---|---|
Q1 | 4 単位 | 6 単位 | 6 単位 |
Q2 | 4 単位 | 6 単位 | 6 単位 |
夏季集中 | 2 単位 | 2 単位 | 4 単位 |
Q3 | 4 単位 | 6 単位 | 6 単位 |
Q4 | 4 単位 | 0 単位 | 4 単位 |
冬季集中 | 2 単位 | 0 単位 | 2 単位 |
合計 | 20 単位 | 20 単位 | 28 単位 |
4. 奨励金
博士論文研究基礎力審査に合格し,博士後期課程に進学した場合,毎月 3 万円の奨励金が支給されます。年間で 36 万円,3 年間で 108 万円が支給されます。そのため,年間の授業が 535,800 円 → 175,800 円になります。また,日本学生支援機構奨学金と併用することも可能です。しかし,SD プログラムのように入学料・授業料分の免除はありません。また,日本学術振興会特別研究員研究奨励金や Doctoral Research Fellow の奨励金とは併用することが出来ないため注意が必要です。
5. おわりに
上記でも述べた通り,情報が少なく,論文提出が半年早い,必要単位が多いなど,5D プログラムでの修士号取得は骨が折れました。また,修士論文研究選択者と忙しさのピーク (修士論文研究選択者は 12 〜 2 月,博士研究計画調査選択者は 7 〜 10 月) がずれているため,2 年次はアウェイ感が常に付き纏いました。その一方,他の学生と忙しさのピークがずれているおかげで,指導教員や研究室のメンバーと議論や添削を頻繁に行えたのはメリットでした。
ここまで,5D プログラムについて記述してきましたが,正直なところ全ての博士後期進学希望者にオススメできる教育プログラムではありません。しかし,1 年次で博士後期課程進学を視野を入れいる学生には,選択肢の 1 つとして欲しい教育プログラムでもあります。筆者も 5D プログラムの途中ではありますが,何か質問があればメールや SNS などで気軽に連絡ください。